地獄の逃避行
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レビュー
サイケデリック世界的テーマ。しかしまだテルテル坊主の屍体には、節の高いカサカサに荒れた両手が、ニューと突き出されたまま残っております。これをどうしてごまかすかと見ておりますと、さすがは絶代の怪人物黒衣博士です。何の造作もないことその両腕の肘なく洗い浄めました。その上に意識を回復しかけている美少女の裸身をソロッと抱え上げまして、その下敷になっていた分厚い棺の蓋を、テルテル坊主の上からシックリと当てがって、その上を白絹の蔽いでスッポリと蔽い包んでしまいました。
「ありゃ取り換えてやらなくっちゃ、あの女が可哀かわいそうだね」と少女は時々苦にがい顔をした。
どうせ強情な少女の事だから、聞けばきっと馬鹿だとか下らないとか云って自分を冷罵するに違ないとは思ったが、それも気にはならなかった。
妾が息を引き取りましたならば、眼を閉じて、口を塞ぎましたならば、今まで妾が見たり聞いたり致しました事実は皆、あとかたもないウソとなりまして、お二人の先生方は安心して貞淑な、お美しい奥様方と平和な御家庭を守ってお出でになれるだろうと思いますから。
相手の顔が突然、悪魔のように険悪になりました。