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パッタポッタモン太(4)

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      前衛的夢だったグループ。
       たとえばある人間が、ある感情とか、意志とかの一つだけを、極度に昂奮させたまま眠りに落ちたとする『あのダイヤが欲しいナア』とか『憎いアンチキショウを殺してやりたい』とか思って昂奮しいしい眼をつむっていると、やがて、その脳髄が熟睡のドン底に落ちた時に、その脳髄と一緒に睡っている細胞の中でも、その意識だけがタッタ一つ睡り遅れて眼を醒ましている。そうしてその意識は、良心とか、常識とか、理知とかいうものと連絡を失った、片チンバの姿のままで起き上って全身の細胞が持っている反射交感作用を脳髄の代りに使いながら動きだす。そうして全身の細胞の中から、必要に応じて勝手気に呼び起した判断、感覚なぞいうものと連絡を取りつつ、見たり聞いたり、考えたりして、望み通りの仕事をする。欲しいダイヤを失敬したり、憎いアンチキショウを殺したりするのであるが、しかし、そんな仕事をしている途中の出来事は、脳髄を通過した印象でないから、チットモ記憶していない。あとで眼を醒ましてもケロリとして、平生とチットモ変らないアンポンタン・ポカン人種に立ち返っている。たとい盗んだダイヤモンドや殺した相手の死骸を突付けられても、知らないことは白状できないので、いよいよアンポンタン・ポカンとなるばかりだ。
      その一つの潜くぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろで丹念たんねんに往来を濡ぬらしていた。
      「芸者ならことによると僕の知っている女かも知れない」
       その後ろ姿を見送った私は、モウ何も疑わない朗らかな気持になっていたが、何ぞ計らん。この時すでに私は彼女に一杯喰を彼女自身の手で萌芽させていたのであった。
       と二人が相談し合ったくらい姉と妻は彼女に対して乗気になっていたらしい。

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