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はじめてのあく

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      なつかしの世界的作品。
       彼女は仕方がないという風に肩を一つユスリ上げた。奇妙な、泣きたいような笑い顔をニッコリとして見せながら、
      そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で。
      その一つの潜くぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろで丹念たんねんに往来を濡ぬらしていた。
       壇上に上がって初めて彼女は笑顔が解けたような、いつも部室で僕たちに見せているようなとまではいかないが、それでも50ワットには達してそうなスマイルだった。
       今や満員となった客席に向かって、ようやく彼女は歌詞以外の言葉をマイクに吐きかけた。

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