水の色 銀の月
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レビュー
始まりの心にしみる作品。姫草ユリ子が私の病院に来たのは昨、昭和八年の五月三十一日開業の前日の夕方であった。見事な、しかし心持地味なお納という姿の彼女がションボリと玄関に立った。
今に看護婦に名前を聞かしてやろう」
「それじゃ僕の都合の好いようにしよう」
野太い声が第一声を放ち、僕は眉をひそめた。
だいたいな、高一の分際で真面目に愛を語ろうなんざ、それこそ頭がイッちまっていると言うべきだろう。口に出すのも恥ずかしいね。愛だって？