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妻をめとらば

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      時代を超えた世界的心のサプリメント。
       どうも驚いた。庚戌会と言えば謹厳な学術の報告会、兼、茶話会みたようなものと思ったが、なかなかどうしてエライ景気だわい。会費の十円の意味も読めるし、幹事の白鷹君の隅に置けない手腕のほども窺われる。こんな事なら鹿爪らしいフロック・コートなんか着て来るんじゃなかったと思ううちに待合室みたような部屋へ案内された。見ると周囲の上までも帽子と外套の推積で一パイである。かれこれ五、六十人分はあるだろう。大会だけによく集まったものだ。
      「君に才覚ができるのかい」と少女は聞いた。
      その一つの潜くぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろで丹念たんねんに往来を濡ぬらしていた。
       意外にも彼女は躊躇うような表情になっていた。ゆっくり立ち上がったものの、なかなか歩き出そうとしない。しまいにはこんなことまで言い出す始末だ。
       そうかもしれん。彼女とたまたま出くわしたことは、あの三年生バンドの人たちにとっては確実にいい結果だったろう。

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