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地球は人物陳列室

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      時代を超えた手放せ無い名作。
       元来細胞なるものは、人間の身体の何十兆分の一という小さい粒々で、度の弱い顕微鏡にはかからないぐらいの微粒子である。だからその内容の複雑さや、その現わし得る能力の程度なぞも、やはり人間全体の能力の何十兆分の一ぐらいのものであろういずれにしても、極度に単純な無力なものであろうというのが今日までの科学者の頭の大部分を支配して来た考えであった。だからその後その細胞の不可思議な生活、繁殖、遺伝等の能力が、次から次に発見されて科学者を驚異させて来たけれども、その研究は依然として顕微鏡で覗かれ、化学で分析され得る範囲すなわち唯物科学で説明され得る範囲の研究に限られて来たもので、大体の考え方は、やはり人体の何十兆分の一という程度の単純な、無力なものという概念を一歩も踏出してはいない。そうしてソレ以上の研究をするのは唯物科学を冒するものである、学者として一つの罪悪を犯すものであるとさえ考えられて来た。
       乱暴に切られた携帯電話をポケットに戻して図書館に戻る。
       そう言って俺を見る彼女の目は、文芸部室で見るものと同じ色を浮かべている。
       自分は驚かされた。
      それでもその看護婦が入口の柱にもたれて、うとうとしていると、彼はわが室へやの中うちからその横顔をじっと見つめている事があった。

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