夕暮れの帰り道
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レビュー
不朽の感動名作。
その刺繍の上手なお嬢さんが、この翠に通っていたのは、もう二昔前の日露戦争頃のことで、私が三十代の時ですから、詳しいことはわかりませんねえ。エエ、通っていたことはたしかですよ。その頃が十七か八くらいでしたろうかねえ。ちょっと眼立たぬ風をしておられましたが、小柄なキリリとした別嬪さんで、名前は虹野ミギワさんと言いました。イイエ、間違いはありません。珍しい名前ですからよく憶えております。また今お話になりましたなどいう刺繍のできる人は虹野さんよりほかに見たことがありません。
そう言って俺を見る彼女の目は、文芸部室で見るものと同じ色を浮かべている。
彼女がとうとうと口上を述べようとしたので、少女はついっと杖を動かして、その頭を叩いた。
看護婦は無言のまま室の外に出て行った。
そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で。
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