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タイガーランド 特別編

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      時代を超えた手放せ無い名作。
       元来細胞なるものは、人間の身体の何十兆分の一という小さい粒々で、度の弱い顕微鏡にはかからないぐらいの微粒子である。だからその内容の複雑さや、その現わし得る能力の程度なぞも、やはり人間全体の能力の何十兆分の一ぐらいのものであろういずれにしても、極度に単純な無力なものであろうというのが今日までの科学者の頭の大部分を支配して来た考えであった。だからその後その細胞の不可思議な生活、繁殖、遺伝等の能力が、次から次に発見されて科学者を驚異させて来たけれども、その研究は依然として顕微鏡で覗かれ、化学で分析され得る範囲すなわち唯物科学で説明され得る範囲の研究に限られて来たもので、大体の考え方は、やはり人体の何十兆分の一という程度の単純な、無力なものという概念を一歩も踏出してはいない。そうしてソレ以上の研究をするのは唯物科学を冒するものである、学者として一つの罪悪を犯すものであるとさえ考えられて来た。
      向側は立派な高塀たかべいつづきで。
      そうしたら実は「あの女」について自分はある原因から特別の興味をもつようになったのだぐらい答えて、少女を少し焦じらしてやろうという下心さえ手伝った。
       老人は老人のように、小児は小児のように、男は男のように、女は女のようにと言ってみれば何でもない事ではあるが、そうしたあらゆる種類の患者の病状を一々親切に聞いて遣って、院長たる私を信頼させて、安心して診察、手術を受けさせて、気楽に入院させて、時としてはその家庭の内情までも聞いて遣って、同情し、励まし、慰めつつ、無事に退院させて遣るその手際と言ったら到底、吾々凡俗の及ぶところではない。神経質な、根性のヒネクレタ老人や、ヤンチャな過敏な子供までも、モウ一から十まで姫草さん姫草さんと持ち切りで、ほかの二名の看護婦はあれどもなきが如き状態であった。アタジケない話ではあるが、患者が退院する時なぞは、院長の私のところへ謝礼をするよりも先ず姫草さんにという傾向になってしまったもので、子供なんぞは泣いて帰らないという。ヒメちゃんと一緒に病院にいるんだと言って聞かない。そのほかの患者でも、退院して後に彼女宛に寄越す礼状の長いこと長いこと。受付兼会計係をしている姉がと呆れるくらいであった。
      どうぞ御安心下さいませ。

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