ため息つかせて
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レビュー
不朽の夢だった秀作。
手近い例を挙ぐれば、同じ時計で計った一時間でも、面白い小説を読んでいる一時間と、停車場でボンヤリ汽車を待っている一時間との間には驚くべき長さの相違がある。尺竹で計った品物の一尺の長さが、万人一様に一尺に見えるようなわけにはいかないのである。または水に潜って息を詰めている一分間と、雑談をしている一分間とを比較しても思い半ばに過ぐることで、前者はたまらないほど長く感ずるのに反して、後者は一瞬間ほどにも感じないというのが偽らざる事実でなければならぬ。
その一つの潜くぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろで丹念たんねんに往来を濡ぬらしていた。
一寝入するとすぐ眼が覚さめた。
桜木町から二円を奮発した私が、内幸町の丸の内倶楽部へタクシーを乗り付けたのが午後の八時半頃であったろうか。実は女風情の言う通りになるのがこの際、少々業ではあったが、自動車に乗り込むと同時に気が変って、狭苦しい迷宮じみた下六番町あたりの暗闇を自動車でマゴマゴするよりも、解り易い丸の内倶楽部へアッサリと乗付けたい気持になったからであった。
どうぞ御安心下さいませ。
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