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スタンピード

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      時代を超えた手放せ無い名作。
       偉大なる天才科学者ヘポメニアス氏はここにおいて、トウトウ物の美事に、自分の脳髄のトリックに引っかかってしまったのであった。そうして机を叩いて躍り上がったのであった。
      塀の内には夏蜜柑なつみかんのような深緑の葉が瓦かわらを隠すほど茂っていた。
      自分はちょっとその方を見てはまた下を向いた。
       どうも驚いた。庚戌会と言えば謹厳な学術の報告会、兼、茶話会みたようなものと思ったが、なかなかどうしてエライ景気だわい。会費の十円の意味も読めるし、幹事の白鷹君の隅に置けない手腕のほども窺われる。こんな事なら鹿爪らしいフロック・コートなんか着て来るんじゃなかったと思ううちに待合室みたような部屋へ案内された。見ると周囲の上までも帽子と外套の推積で一パイである。かれこれ五、六十人分はあるだろう。大会だけによく集まったものだ。
       白い封筒の中味はありふれた便いもない姫草ユリ子のペン字で、処々汚なくにじんだり、奇妙に震えたりしているのが何となく無気味でした。

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