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震災の記録I

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      青春時代の楽しみ心のサプリメント。
       また、こちらの方では四十ぐらいの職人風の男が二人、親密そうに肩を組んで、最前の年増女と直角の方向に、行きつ戻りつしております。もっとも右側の男は東京見物、左側の一人は南極探検の意味で、かように意気が投合して、大旅行を続けているのだそうですから、まことに世話が焼けません。それからこちらの入口のところに坐っております肥ったお婆さんは、相当な身分の人らしいことが、その上品な着物の柄で推量できますが、しかし御本人は、そんなつもりではないらしく、いつもあのように貧民窟に住んでいるような恰好で、おりもせぬ虱になりまして、大きな音を立てながら着物をハタキ始めますので、そのたんびに演説屋も、二人の職人も、女学生も、心理遺伝の発作を中止して、指さし、眼さし、腹を抱えております。
      「君に才覚ができるのかい」と少女は聞いた。
      そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で。
       お二人の先生方のようなお立派な地位や名望のある方々にまでも妾の誠がありましょう。
       だからこの時も姫草看護婦に対する疑いを、普通一般の嫉と混同するような気は毛頭起らなかった。また彼女の変痴気趣味が出たなぐらいにしか考えなかったが、それでも、そうした彼女の姫草ユリ子に対する疑いが、何かしら容易ならぬ大事件になりそうな予感だけはハッキリと感じたから、念には念を入れるつもりで私は、彼女の考えを一応、検討してみる気になった。

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