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ヤマトナデシコ七変化(8)

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      不朽の楽しみ名作。
       まず第一に視神経を吸い寄せられまするのは、部屋の中央を楕円形に区切って、気味の悪い野白色の光を放っている解剖台でございます。この解剖台は元来、美事な白大理石でできているのでございますが、今日までにこの上で数知れず処分されました死人の血とか、脂肪とか、垢に浸み込んで、かような陰気な色に変化してしまったものでございます。
      その一つの潜くぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろで丹念たんねんに往来を濡ぬらしていた。
      彼は繰り返して「あの女」の眼つきだの鼻つきだのを自分に問うた。
       桜木町から二円を奮発した私が、内幸町の丸の内倶楽部へタクシーを乗り付けたのが午後の八時半頃であったろうか。実は女風情の言う通りになるのがこの際、少々業ではあったが、自動車に乗り込むと同時に気が変って、狭苦しい迷宮じみた下六番町あたりの暗闇を自動車でマゴマゴするよりも、解り易い丸の内倶楽部へアッサリと乗付けたい気持になったからであった。
       跳って、中禿を巧みに隠した頭を下げました。

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