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ユメ十夜

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      時代を超えた思い出名作。
       そのほか寝小便のお陰で、太古の大洪水の夢を見る。鼻が詰まったお陰で、溺や蛇のようにのたくりまわる台所道具を連想したり、苦痛を現わすために、鮮血の滴る大木や、火焔の中に咲く花を描き現わしたりすることは、あたかも神秘の正体を知らない人間が、羽根の生えた天使を考えるのと同様である。
      額や鼻の頭に汗と油が一面に浮き出しているのも不愉快だった。
      そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で。
       私の日記を翻して見ると、それはやはり十一月の三日、明治節の日であった。彼女が事を起すのは、いつも月末から初旬へかけた数日のうちで、殊に白鷹先生から電話がかかったり、手紙が来たりするのは大抵三日か四日頃にきまっているのであった。そこにこのの神秘さがあった事を神様以外の何人が察し得たであろう。
       何よりも先に明らかに致して置きたいのは彼女姫草ユリ子と自称する可憐の一少女が、昨春三月頃の東都の新聞という新聞にデカデカと書き立てられました特号標題のと認めて、即刻、警視庁に移牒したという理由もそこに在る事と察しられるのですが、その新聞記事によりますと(御記憶かも知れませんが)彼女は、その情夫? との密会所を警察に発見されたくないという考えから、その密会所付近の警察に自動電話をかけたものだそうです。

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