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パフューム ある人殺しの物語 プレミアム・エディション

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      時代を超えた夢だった名作。
       ずっと古い昔のことは存じませんが、私の家は代々姪の浜で農業を致しておりました。私共姉妹は母に早く別れましたが、父も私が十九の年の正月に亡くなりましたので、家の血統は私とこの妹(位牌をかえり見て)千世子と二人切りになってしまいました。それで、その年の暮に私は、亡くなりました夫の源吉を迎えますと間もなく妹は、という置手紙をして家を出ました。それが明治四十年の新の正月頃のことでございましたが、その後、福岡で妹を見かけたという人もありましたけれども、ハッキリしたことはわかりません。やはり全く絵と刺繍が好きなためでございましたろうと思います。一郎が申しますように、人並はずれて勝気な娘で、十七の年に県立の女学校を一番で出たくらいでございますが、何か始めますと夢中になる性をさせましたが、私の家は門のところが町並ではございますし、出入りもかなりに多い方でございましたから、別におかし気なことを仕出かして出て行ったものとも思われません。
      自分はこの時もう気が変っていた。
      すると病人はまだすやすや眠っていた。
       そればかりじゃない。なおその上にモウ一つ。これは私の職業意識とでも言おうか。私が彼女を見た時に、第一に眼に付いたのは彼女の鼻であった。
       彼女と私とがコンナ風にシンミリとした憂鬱な調子で言葉を交した事はこの時が初めてだったように思う。何となく虫が知らせたとでも言おうか。それともこの時すでに、白鷹先生の事に関して、絶体絶命の破局にグングン追い詰められつつ在る事を自覚し過ぎるくらい、自覚していた彼女自身の内心の遣ない憂鬱さが、私の神経に感じたものかも知れないが。

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