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道草 咲きかけのぺんぺん草編

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      青春時代の楽しみ名作。
       けれども僕は本当のことを言いますと、この直方を好きませんでした、それは東京からこっちへ来ます途中で、身体の具合がわるかったせいか、汽車にヒドク酔いまして、あの石炭の煙のにおいが大嫌いになってしまいましたのに、こっちへ来ますと、そこら中が炭坑だらけで、朝から晩までそんな臭いばかりするからだろうと思います、けれども、母がせっかくいいところだと言って喜んでおりましたから、仕方なしに我慢しておりました。そうするとそのうちに慣れてしまって、汽車には酔わなくなりましたけれども、空気の悪いのと石炭の臭いだけはシンから嫌でした。それから学校に入りますと、生徒の言葉が色々になっていて乱暴でわからないので困りました。日本中から集まった人の子供がいるんですから。
      雑巾をゆすがないので、せっかく拭いた所がかえって白く汚れた。
      自分は枕まくらを借りて、少女の隣の空室あきべやへ、昨夕ゆうべの睡眠不足を補いに入った。
       一番最初の問答に出た彼女の兄なる人物は、彼女が来てから間もなく倉屋の黒に持って病院に挨拶に来た。もっともそれは私が帰宅したアトの事で、誰もその兄の姿を見届けたものはいなかったが、ちょうど私が自宅で夕飯を終ってから、何かしらデザートじみた物が欲しいと思っているところへ、病院の姫草ユリ子から取次電話がかかって来た。
       それはイツモの気軽い彼女には似合わない、妙にコダワッた薄暗い応対であった。しかし間もなく平生の無邪気な快活さを取り返した彼女は、さもさも嬉しそうにあたかも白鷹助教授と臼杵病院長を紹介する光栄を喜ぶかのようにピョンピョンと跳ね上りながら電話室へ走り込んで行った。

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