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ヒッチコック・クラシック・セレクション(4)

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      なつかしの感動心のサプリメント。
       あア。化けて出られぬ奈落へ抜けるよ。そんな危い地獄の扉が。もしも本当にそこいら中に。あるとなったらさてどうなるか。お立会い衆はむろんのことだよ。政府当局、天下の学者。知識階級の誰かれ問わない。血あり涙のある方々が。知らぬ顔して捨ててはおけまい。古い川柳に座敷の牢屋で。薬飲むにも油断がされぬと。(註に曰く座敷牢薬をのむに油断せず柳樽)ござりまするはお江戸の昔じゃ。ましていわんや近代文化の。科学知識の進歩の中でも。人の脳髄、心の正体。何が何やらわからぬために。精神病学研究仕方が。八方塞のキチガイ。ハッキリ区別もできない癖に。ほかの医学の体裁真似して。治療診察なんどと言うては。四角四面の病院作って。器械標本、薬に書物と。並べ飾って威張っているなら。こんな地獄ができるは当然。これを防ぐが目下の急務じゃ。そんな病院見当りしだいに。タタキ潰すが何より急務じゃスカラカ、チャカポコ、チャカラカ、チャカポコ。チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ。
      どうせ強情な少女の事だから、聞けばきっと馬鹿だとか下らないとか云って自分を冷罵するに違ないとは思ったが、それも気にはならなかった。
      一寝入するとすぐ眼が覚さめた。
       さらに驚くべき事実は(実は当然の帰結かも知れないが)彼女のお蔭で私の患者がメキメキと激増した事であった。この点、私の開業は非常に恵まれていたと同時に、彼女姫草ユリ子と名のるマネキン兼マスコットに絶大の感謝を払わなければならなかった。受診に来る患者の甲乙丙丁が、何につけても姫草さん姫草さんと尋ね求める態度を見ると、ちょうど臼杵病院の中に姫草ユリ子が開業をしているようで、多少の自信を腕に持っている私も、彼女のこうした外交手腕に対しては大いに謙遜の必要を認めさせられていた次第であった。
       その十一月の三日のこと。シトシト雨の降り出した午前十時頃、私が病院に出勤すると、玄関の扉の音を聞くや否や、彼女が薬局から飛び出して、私の胸に飛び付きそうに走りかかって来た。唇の色まで変ったヒステリーじみた表情をしていた。

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