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居酒屋兆治

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      不朽の心にしみる名作。
       ナアニ。ごまかすんじゃないよ。今言う吾輩の脳髄論と大関係があるんだ。探偵小説というものは要するに脳髄のスポーツだからね。犯人の脳髄と、探偵の脳髄とが、秘術をつくして鬼ゴッコや鼬ゴッコをやる。その間に生まれるいろいろな錯覚や、幻覚、倒錯観念の魅力でもって、読者のアタマを引っぱって行くのが、探偵小説の身上じゃないか。ねッ。そうだろう。
      「それじゃ僕の都合の好いようにしよう」
      「また例の男かい」と少女が云った。
       そう言って私は姫草ユリ子に頭を一つ下げた。
       それから電話の内容を話して聞かせると、如何にも安心したらしく、さも嬉し気にピョンピョン跳ねて廊下を飛んで行くのであった。

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