初見良明 口伝 その1
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レビュー
不朽の感動秀作。どうです諸君。わが畏敬すべき法医学者、若林鏡太郎君は、遠からず全世界に大流行を来たすべきを研究して、その流行を未然に喰い止めるべく、その実例を蚤で探している。その犯罪の被害者らしい精神病者や自殺者が、地上到るところにウヨウヨしているにかかわらず、その犯行の手がかりとなるべき暗示材料、その他の証拠が見当らないために、本当の研究が発表できないという悲惨事に直面して、あらゆる苦心惨憺を続けている。そうして、あらゆる人間の身振り、素振り、眼付き、手付き、口つき、言葉つきの端々に到るまでも、精神科学応用の犯罪ではないかと疑い続けているのだ。
看護婦の払塵はたきの声がここかしこで聞こえた。
松だの石榴ざくろだのの盆栽が五六鉢はち並んでいる傍そばで、島田に結いった若い女が。
跳って、中禿を巧みに隠した頭を下げました。
と彼女はイクラか不平そうに可愛い眉を顰めるのであった。こうした技巧と言ったら、それこそ独特の天才と言うべきものであったろう。実に真に迫ったものがあった。彼女と、彼女の創作した白鷹先生との親密さに就いて、微塵の疑いをさし挾む余地もないくらい真に迫ったものであった。