にっぽん昆虫記
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レビュー
不朽の思い出秀作。
なおまた、このほかに、この少年の骨相の中には、見逃してはならぬ大切なものが残っております。それは一面に極めて楽天的な、呑気なところがありながら、チョットした刺激や、僅かな環境の変化にもすぐに感激昂奮して、あたりかまわず笑ったり、泣いたり、怒ったりする一口に申せば、極めて気の変り易い、フランス人みたいな性格を象徴している、純ラテン型の薄い腮を持っていることでありますが、しかし、この特徴も、この少年の平生の性格には、あまり現われていないようであります。やはり前に述べました極めて明晰な頭脳と、厭人的にハニカミがちな性格に押え付けられているらしく思われるのであります。とは申せ、随分と著しい特徴でありますから、この少年が解放治療場に参りましてから後の、長い長い心理遺伝の発作の途中、もしくはその回復期において、いつかはそうしたこの少年の腮の性格感傷的な、もしくは激情的な気質が、現われるに違いないであろうことを、彼女は楽しみにして待っておられた次第でございます。
そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で。
「それじゃ僕の都合の好いようにしよう」
と即答をしましたが、その刹にはソンナ気振も見せないようにして、平凡な開業医らしいトボケ方をしておりました。姫草ユリ子の行方を知っていないでよかった。知っていると言ったら直ぐに付け込まれて脅迫されるところであったろうと腹の中で思いながら。
彼女の看護婦としての腕前は申し分ないどころの騒ぎではなかった。K大耳鼻科のお仕込みもさる事ながら、彼女は実に天才的の看護婦である事を発見させられて、衷から舌を巻かされたのであった。
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